谷川岳(上信越)〜不思議な魅力に引き寄せられた上越国境の旅〜
2013年10月19日(土)
新潟県と群馬県の県境に位置する谷川岳(たにがわだけ)に行ってきました。
日本百名山の一つであり、トマの耳(1,963m)とオキの耳(1,977m)の特徴的な双耳峰を有する三国山脈を代表する山。
谷川岳は標高2,000mにも満たないが、急峻な岩壁と複雑な地形に加えて、中央分水嶺のために天候の変化も激しく、遭難者の数は群を抜いて多い「魔の山」と呼ばれています。
一方、都心から2時間弱の移動距離でアクセスが良く、天神平ロープウェイに乗ることで、「楽にアプローチ可能な良い山」でもあります。
「危ないけれども挑戦しやすい」
そんな不思議な魅力で人を惹きつける谷川岳を、少し垣間見た秋の旅を記録に残します。
谷川岳の記録
西黒尾根
AM07:15
谷川岳ベースプラザに到着。
サーモスに入れてきた熱いお湯がザックの中で決壊し、衣類、その他諸々を温めてくれていた。
そんなハプニングを乗り越えて、僕たちはどんよりとした天候の中を谷川岳へ向けて出発した。
今旅の同行者は、会社は同じだけど勤務地の異なる2名。
左のパステルカラーは会社の同期。これまでの旅にも何度か出現中。
右は年齢は同じだが後輩。高身長をウリとしているが、何かと困ることが多いとか。
今回、僕たちは日程を合わせて谷川岳を登ることになった。
谷川岳では、山岳事故が多発しているため、ルールとして登山届提出の義務があります。
提出先は谷川岳登山指導センターかベースプラザ。
谷川岳へ登る一般的なルートは以下の2つある。
1、天神平からピークを狙う天神尾根。
地図上の天神峠から北西に向かって伸びるルートがそれです。
2、日本三大急登に選ばれている西黒尾根。
谷川岳に向かって伸びる展望の良いスカイラインとなっています。
僕たちは、西黒尾根を登り、天神尾根を下る計画にした。
草木が生い茂る樹林帯は、数日前の台風の影響による倒木があり、ルートがわからない場所もあったが、無理やり突破することで解決した。
コース途中にクサリ場があるが、慎重に行けば問題ない。
霧が濃くなり、少し雨が降ってきた。
足元が滑りやすくなってきたため、集中力を高める必要があります。
AM09:30
ラクダの背を通過した時点では、相も変わらず視界不良。
順調に標高を稼いでいたその瞬間。
一気に風が吹き、これまで立ち込めていた霧が消えて西黒尾根の全容が見えた。
谷川岳へ向かって伸びる尾根の姿を見て、周囲の登山者も歓声をあげていました。
この瞬間、この時間を楽しもう。
先ほどまでの霧と雨からは想像できない景観に喜びを隠せません。
歩いてきた西黒尾根と雲海。
その向こうに見える山は、白毛門(しらがもん)と呼ばれる谷川岳の隣にそびえる名峰でしょうか。
CHUMSのレインカバーを背負いつつ、姿を現した谷川岳の絶壁を写真に納めています。
家に帰ってから写真を見返すと、同じような画ばかりというのはありがちな話。
天神尾根から登ってくる登山者が見えてきました。
ロープウェイを使うコースであるため当然ながら人の数も多い。
ここまで来ると、先ほどまで下から見上げていた西黒尾根も終わりを迎える。
西黒尾根は時間にすればあっという間に終わってしまったが、ドラマのような名シーンがいくつも盛り込まれていた。
2つの耳
「雲の上を歩きたい」
そんな子どものような願望を抱きたくなるほど、この日は雲海が広がっており、空のほとんどを制圧していました。
秋の谷川岳は足元に少し雪が降った痕跡もあり、冬の訪れがすぐそこに控えていることを物語っていました。
奥に見えるのは、先月訪れた日光白根山(にっこうしらねさん)ではないかと予想します。
こちらは秋の気配を感じる良き旅でした。
どこまでも続く谷川岳の稜線と肩の小屋。
谷川岳はオキとトマ、二つの耳を中心としたエリアが目立ち、世間的にも有名です。
そして、僕たちもそこを目指して来たパーティーの一組に違いない。
しかし、僕らが目指していた谷川岳は、谷川連峰と呼ばれる広大な稜線が伸びる上越国境の一つにすぎなかったことをこの場で知ることになった。
それほどまでに大きく、広かった。
AM11:12
谷川岳トマの耳1,963m地点。
このときには視界も先程より良くなり、遠くの山まで見渡せる状態までになっていました。
紅葉が山麓に向かって降りている様子がわかります。
薄っすら雪を纏った新潟県の苗場山(なえばさん)が谷の向こう側に見えます。
特徴的なため、遠くから見てもはっきりと認識することができた。
トマの耳からオキの耳へ。
この日の谷川岳は天気があまり良くない予報であったが、多くの人が山を登りに来ていました。
そして、原宿にある竹下通りと変わらないのではないかと思うほどの混み具合。
AM11:35
そんな混雑状況ではあったが、谷川岳オキの耳1,977m地点に到着。
これでトマとオキの双耳峰を制し、谷川岳に登ったと言えるでしょう。
山頂は混んでいるため停滞できたものじゃない。
オキの耳より先に行くと、鳥居が見えたので行ってみることにします。
富士浅間神社の奥の院。
富士浅間神社といえば、日本一標高の高い富士山の麓にある神社が有名です。
オキの耳が谷川富士と呼ばれていることに関係しているのかもしれない。
休憩後、来た道を戻り、肩の小屋を目指す。
トマの耳には白く降りかかった雪が見えます。
方角で言えば東向き、茨城方面。
あの山はなんという山でしょう。
肩の小屋付近が賑わっている様子が伺える。
なんと、結婚式を挙げている方々がいました。
魔の山と呼ばれる谷川岳で結婚式を挙げる勇気。
強風で大変な思いをしながらも、なんとか成功したみたいです。
末長い幸せを願います。
天神尾根
PM01:14
少しばかりのランチタイムと休息をとり、谷川岳に背を向ける。
天神尾根に来ると登山人口が一気に増えたため、賑やかな下山路となっていた。
その中でも、外国人男性が女性をエスコートして大渋滞を巻き起こしていた姿がとても印象的でした。
気づけば登山日和な天気に変わってしまった。
麓の街、水上町も見えてきました。
下山するにつれて、枯れた紅葉が現れてきた。
谷川岳の秋はもう直ぐ終わりを迎えようとしています。
しかし、もう少し標高を下げれば、紅葉の見頃を迎えている木々が広がっていた。
雲海と紅葉、その両方を味わうことができて本当に良かったと心の底から思いました。
テープを繋ぎ貼りして作られたロープウェイの案内表示。
経費削減が伺えます。
身長が高い彼は、飛び出た木に気付かず頭をぶつけていました。
身長も程々がいいということですね。
天神平が見えてきたところでゴールです。
雪のある時期は天神平スキー場になり、谷川岳の勇姿を横目に滑走することができます。
PM03:15
登山者の数に反比例して、ロープウェイはあまり混雑しておらず、すぐに乗ることができました。
山麓ベースプラザには、各種お土産が用意されているので時間のある方は立ち寄ってみてください。
モグラ駅
PM03:54
ベースプラザから少し車を走らせた場所にあるJR東日本上越線の土合駅(どあいえき)に寄りました。
通称「日本一のモグラ駅」と呼ばれ、下り線のホームが地下深くに設置されている珍しい駅です。
無人の改札を抜け、ホームへと続く通路を歩きます。
階段の数は462段あり、下にあるはずのホームからは冷んやりとした風が優しく吹き抜けていた。
ここから先の見えない迷宮へと進みます。
ホームに到着したが誰もいない。
その静けさはどこか不気味であり、恐くて長居は出来そうにありません。
早々に立ち去ることにした。
PM04:33
地下深くで冷えた心と身体を温めるべく、谷川温泉にある湯テルメ・谷川へ向かった。
この温泉は露天風呂までの道が長いため、寒い時期は多少の我慢を必要とします。
火照った身体を休ませてから外に出ると、すでに陽が落ちて辺りは真っ暗。
秋が進むにつれて人間の活動時間が短くなっていることを感じながら、東京へ向けて車を走らせた。
谷川岳のまとめ
谷川岳の魅力。
この答えを問われた時、どう答えればよいか非常に迷います。
それほどまでに不思議な力で人を魅力する山でした。
特に今旅はワンシーンごとに様々なドラマが詰まっており、一番の魅力を一つに絞ることはとても叶いません。
雲で埋め尽くされた海のような空。
遥か彼方へと続いている三国山脈の稜線。
クライマーを魅了する岩壁。
玄人から万人までを受け入れることができる懐。
このどれもが谷川岳の魅力であることに間違いありません。
ただし、僕たちが今回見た谷川岳の不思議な魅力はほんの一部に過ぎません。
日本にも四季があるように谷川岳にも四季折々の素晴らしい姿があります。
いつの日か再び訪れた時、このときとは異なる姿、魅力を僕たちに見せてくれることを期待したいと思います。
谷川岳の位置
谷川岳の地図
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