NAMARA TriP

なまら旅して、なまら撮る

雨飾山〜秋深まる小谷村の旅〜

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 2014年10月11日

 長野県小谷村と新潟県糸魚川市の県境に位置する雨飾山に行ってきました。標高は1,963mあります。「猫の耳」と呼ばれる特徴的な双二峰を有する雨飾山は、妙高戸隠連山国立公園に属し、日本百名山に選定されています。

 また、雨飾山を有する長野県の小谷村は、「特別豪雪地帯」に選ばれており、冬になればその豪雪を生かした雪遊びが盛んに行われている日本を代表する雪国でもあります。

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 「秋の紅葉刈りはどこへ行こうか」と模索していたときでした。豪雪地帯ならではのブナの木が多く自生し、秋になればとても美しい紅葉が見れる"雨飾山"という山を知りました。

 そんな噂を知ってしまったこともあり、東京から約300km離れた小谷村へ日帰りで旅に出ました。

 小谷の秋

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 深夜に僕たちは東京の眩しいネオンを抜けて長野県の小谷村を目指した。夜が明けぬまま、姫川沿いに伸びる国道148号線を北上し、小谷村中心街から小谷温泉へ向けて車のナビに案内されるがままに進むと、突如山奥に車がたくさん現れた。

 「こんなに人の多い山だったのか」と思わず怯んでしまった。その混雑ぶりにほんの少し気持ちが減退した。

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 雨飾山へのアプローチは大きく分けて2つある。一つは長野県側の小谷温泉、もう一つは新潟県側の雨飾温泉であり、それぞれ主要な登山道が伸びている。歴史的には小谷村の方が後から開拓された登山道とされており、登りやすい。今回はその小谷温泉をベースとした登山道からアプローチした。

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 登山届けを提出し、身体をほぐしていると、徐々に夜明けが訪れた。10月になってから日の出が遅く、徐々に冬に向かっていることを感じる。

 山頂までは約4時間の道のりとなっており、まずは荒菅沢を目指す。

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 登山口付近まで紅葉が進んでいることから、この奥は予想通り紅葉が見頃を迎えていそうだ。

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 順調に歩を進めていると、徐々に昇り出した陽がブナの紅葉を照らした。そこから先はブナの木々たちが、一年で最も紅く染まっていた。1週間もすれば見頃の時間は過ぎてしまうことを考えると運が良かった。

 関東近郊の紅葉とは一線を画す紅葉の数々に、僕たち3人は喜びを隠せなかった。到着時は人の多さに気持ちが落ちていたが、遠くからはるばる来た甲斐があった。

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 天候にも恵まれた秋晴れと紅葉の中、布団菱と呼ばれる雨飾山の岩壁が観える荒菅沢に出た。この雨飾山の姿を見るために皆、遠くから来ていたのかと思うと少し納得した。

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 荒菅沢に降りると、この時期でも豊富な水が流れ、休息をするには良い場所になっていた。

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 「あの辺に行くよ!」の画。

 荒菅沢は春になると、上部からスキーで滑走する人が多くいるらしい。

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 荒菅沢から登り始めると、今が見頃の木々が辺り一面にあり、皆足を止めてこの瞬間を楽しんでいた。

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 森林限界付近まで登ると、先ほど出発した駐車場と紅く染まる森が俯瞰して見えた。雨飾山南斜面全体が紅葉しているその規模に圧倒される。

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 ここから稜線のポイントまでは尾根伝いに岩場を登っていく。 

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 尾根を登りきり、笹平と呼ばれる一面笹だらけの場所に出ると、雨飾山の本峰が見えた。

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 距離と割合も小谷村が表記してくれている。登山道の整備といい、雨飾山を登ることに対して歓迎していることが伝わってくる。

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 荒菅沢の上部に当たる場所に着いた。このまま滑り出したい気分になるのは僕だけではないはず。

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 山頂が近づいてくると、人の行列が見える。仕方がない...

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 無事山頂に到着した。とても混雑している山頂からは、白馬岳を中心とした後立山連峰が遠くに観えた。

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 山頂には石仏が祀られていた。雨飾山の名の由来は、山頂に祭壇を祭り雨乞い祈願をしたことが起源とされている。

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 白馬岳付近も山の上部が紅葉で色づいているのが薄っすらと見える。3,000m付近はそろそろ雪が降り始める時期になってきた。

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 山頂からは糸魚川市が見え、そこから続く街並みの向こう側には日本海が観える。

 糸魚川の漁師たちは、雨飾山を海に出た時の目印にしていたそうだ。

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 山頂でのんびり休憩をしていると、雲がかかって白馬岳の姿も確認できなくなってきた。そろそろ下山する頃合いが来たようだ。

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 下山者で登山道がいっぱいになったことで、なかなかスムーズに降りることは叶わなかったが、そういう時は周囲に広がるまたとない紅葉のその一瞬に目を向けた方が良い。

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 山の裾野全体に広がりを見せる紅葉の向こう側には活火山とへリスキーで知られる焼山が見えた。この尾根を辿れば雨飾山から縦走することができるのか。

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 小谷の紅葉は、今後も色褪せることのない記憶として自分の中に残ると思いながらゆっくりと荒菅沢に向かって降りた。 

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 荒菅沢から見上げる布団菱。その向こう側にあった雨飾山の不思議な魅力に思いを馳せる。短い時間だったが、山全体が紅葉する雨飾山を感じるには十分な時間だった。

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 対岸の山も見頃を迎えている。

 低い山でも山全体が紅く染まる紅葉は、このエリアの魅力かもしれない。

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 荒菅沢に別れを告げ、紅葉を楽しみつつ朝来た道を歩く。

 ブナ平の紅葉は黄葉の木々が僕たちの頭上高くに輝いていた。

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 駐車場に戻ると、朝の喧騒は落ち着きを取り戻していた。駐車場の紅葉が朝よりも輝いて見えたのは気のせいではないように思えた。

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 雨飾山の南斜面に広がる雨飾高原には、「鎌池」と呼ばれるブナの木々に囲まれた静かな池があるので立ち寄ることにした。

 新緑や紅葉の綺麗な場所として知られる鎌池には、その昔大蛇がいたという伝説があるが、この神秘的な池ならそれもあり得るのかもしれない。

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 下山後は小谷温泉に向かい、立派な建物である雨飾荘の源泉掛け流し温泉で汗を流した。近くに寸志で入浴可能な雨飾高原露天風呂もあるので、次来た時に入ってみたいと思う。

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 下山後は長野市まで快調に車を走らせたが、街の中心部に差し掛かったあたりで流れが止まった。どうやら花火大会が開催されているようだ。

 打ち上げられる火の花が、長いようであっという間だった秋の小谷村の旅に終わりを告げた。

 

雨飾山を旅して

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 この旅で見た紅葉の輝きは、1週間前でも後でも見ることはできなかったでしょう。

 もっと言えば、紅葉の本当のピークと呼ばれるものは、1日で過ぎ去ってしまう話もよく耳にします。

 そんな紅葉の見頃を迎えた雨飾山の輝きに出会えたことは、これからも忘れられない僕たちの思い出になると思います。

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 東京からは日帰りで行くには、とても遠く感じた小谷村でした。

 しかし、小谷村を訪れて雨飾山に登った人であれば、春の新緑と秋の紅葉そして冬の豪雪と、自然豊かな環境に恵まれた小谷村に季節を変えて、再度訪れたいと思ったことでしょう。

 この神秘的な自然が次訪れるそのときまであり続けて欲しいと思います。

雨飾山の位置