安達太良山(東北)〜晩秋を迎える陸奥、うつくしまの旅(1日目)〜
2013年11月2日(土)
福島県中部にある活火山、安達太良山(あだたらやま)に行ってきました。
南北約9kmの安達太良連峰の主峰である安達太良山は、荒々しい活火山の姿と自然豊かな森林が1つの山で共存している特徴を持った山です。
春の残雪に始まり、初夏の新緑、秋の紅葉、そして冬のスキーなど、それぞれの季節に特徴的な魅力があり、四季を通じて山に人が入っています。
11月に月が変わって秋も深まり、高山では雪が降り始めて冬に向かい始めた頃、僕たちは福島県の山を登るために1泊2日で旅に出ました。
1日目の安達太良山と2日目の一切経山(いっさいきょうざん)で記録を分けて残します。
安達太良山の記録
日付:2013年11月02日(土)
人数:4人
交通:車
登山:約5時間(休憩含)
秋晴れのうつくしま
午前05時46分
例のごとく夜が明けきらぬ時間に集合。
都内はこの季節になり、やっと肌寒さを感じるまで気温が下がってきました。
登山行程の短さと1泊2日の日程を鑑みて、この日はゆっくり出発することにしました。
午前09時59分
3連休で多少の混雑があった東北自動車道を北へ走り、栃木県北部にある那須高原を通り過ぎた辺りから、車の数も次第に減ってきました。
関東の人にとって那須より上は東北になるため、一つのボーダーラインとなっています。
そこからさらに北上して福島県に入ると、左手に大きな山の連なりが見えてきます。
それが安達太良連峰です。
二本松ICを降りて、あだたら高原スキー場に到着した頃には他県から訪れたと思われる車で駐車場が溢れていました。
今回のメンバーは職場の同期であり、それぞれいつも山に一緒に行っているのですが、こうしてみんな集まって山に来たのは初めて。
以前、会津の磐梯山を一緒に登った経験のある荒くんが先陣を切ってくれます。
余談ですが、福島県を中心に広い範囲で昔は陸奥(むつ、みちのく)と呼ばれていました。
7世紀の設置時の範囲は、およそ現在の宮城県の中南部、山形県の内陸部、福島県のほぼ全域、茨城県の北西部に相当し、内陸盆地のみならず、阿武隈高地以東に位置する太平洋沿岸である福島県浜通り(旧磐前県)や宮城県沿岸部も含まれていた。出典:陸奥国 - Wikipedia
安達太良連峰の表玄関として利用されている奥岳登山口からの入山となります。
以前は登山口に奥岳温泉があったようですが、東日本大震災の影響で閉鎖されたようです。
往路はあだたら高原スキー場のゴンドラリフトを利用して中腹まで進みます。
登山道を利用して歩くことも可能ですが、時計の針は刻々と進んでおり、出発の遅い僕らに選択の余地はありません。
標高1,000m付近では、紅葉が見頃を迎えて黄金色に輝いていました。
あだたらエクスプレスに乗って約6分で山頂駅に到着します。
少し歩くとみはらし台に出ます。
これ以上ないくらいの秋晴れ。
左から順に、ニキビのような出っ張りの乳首と呼ばれる安達太良山の山頂。
真ん中に見えるのは、矢筈森(やはずもり)と呼ばれる峰。
右の軍艦のような山は鉄山(てつざん、くろがねやま)。
紅葉は山麓に降りてしまいましたが、最盛期の安達太良山の紅葉はJR東日本の広告やポスターでも紹介されるほど圧巻であり、彩り豊かな紅葉で有名です。
最盛期を狙って再訪したいと思います。
奥岳からゴンドラで薬師岳まで来れるため、観光目的の方も数人見受けられました。
登山道が安達太良山頂に向かって通っているため、観光客の方たちとはここでお別れです。
街から見える山、山から見える街
午前10時49分
ナナカマドの実も赤く色づいています。
「ナナカマド」という和名は、"大変燃えにくく、7度竃(かまど)に入れても燃えない"ということから付けられたという説が広く流布している。(出典:ナナカマド - Wikipedia)
実際には、燃えるそうですが。
「数週間前は標高1,500m付近から山麓にかけて、斜面全てが色付いてそれに合わせてたくさんの人も訪れた。」
と通りすがりの地元民らしきおじさんが言っていました。
標高を稼ぐと、山頂駅のある薬師岳が小さく見えます。
雲が少し出てきましたが、風も少し強くなってきました。
山頂へ向かう人の中には、小学生の団体や乳飲児を背負っているお父さんなどがいました。
行程の難易度や街から近いなどの理由から幅広い年齢層に人気があるみたいです。
順調に高度を上げていくと、視界が開けてきました。
位置的に山形県と宮城県の県境にある蔵王連峰(ざおうれんぽう)ですが、近く感じるのは気のせいでしょうか。
乳首に人が群がっています。
陸奥の名峰にそんな卑猥な名前をつけたのは一体誰なのでしょう。
鉄山の下に見えるのが、今日の下山ルートです。
今回は奥岳を中心とした周回ルートになっています。
街から見える山に登り、その街を見下ろす。
東北には古くからその土地に住む人々の生活に根付いた山が多くあります。
安達太良山も街から近く、二本松市のシンボルのような存在であり、東北を代表する名山です。
決して標高が高いわけではないのですが、森林限界が低いこともあり、標高以上に開放感と高度感を味わえるのも東北の山の魅力かもしれません。
火山の脅威と恩恵
午前11時02分
安達太良山山頂は広くて至るところに岩が転がっており、火山活動の面影が少しあります。
少し早いですが、昼食をとります。しかし、ここにきて風が強く吹き付けるため、ランチタイムという雰囲気はなくなり、あるものを急いで食べることしかできませんでした。
標高1,700mの乳首の上に立つと磐梯山が見えます。
磐梯山も紅葉が綺麗とよく耳にします。
東北の山は紅葉の時期になると、より一層輝きますね。
混雑している乳首を後に、再び歩を進めます。
3連休ということもあってか、昼にかけて人がどんどん増えてきます。
ここからは鉄山にかけて稜線の素晴らしさも味わえます。来た道を戻るよりも稜線を歩いて周回する方が、安達太良の旅をより色濃いものにできるでしょう。
安達太良山と鉄山の鞍部に差し掛かったあたりにある牛ノ背から沼ノ平(ぬまのだいら)が見えます。
1996年に噴火があり、火山性ガスが発生したため、立ち入り禁止になっています。その翌年、登山者4名が視界不良の中、硫化水素を吸ってしまい亡くなっています。割と最近の話で、ニュースでも話題になったみたいです。
名湯、くろがね温泉
午後00時47分
牛ノ背から峰の辻を通って下山路を進みます。
登山やっている人なら聞いたことがあるかもしれない、くろがね小屋と言う山小屋。
源泉かけ流しの温泉があり、くろがね温泉と呼ばれている。
通年営業で、特に冬の営業小屋は東北では珍しいこともあり有名です。
そして、歴代から引き継いでいるくろがね小屋カレーが名物らしい。
泊まって、温泉入って、カレーライスを食べる。そして、下山後も温泉に浸かる。
そんな贅沢な旅がしたいです。
山小屋を後に下山していると、紅葉している木々が山から二本松の街に向かって彩っていました。
東北の紅葉は山全体が染まるから圧巻ですね。
長い帰り道で会話をしながら下山路を進み、安達太良山が平安時代から世間に認知されていることについて話しました。
安達太良の 嶺(ね)に伏す鹿猪(しし)の ありつつも
我(あれ)は至(いた)らむ 寝処(ねど)な去りそね
出典:万葉集その百四十六(安達太良山:あだたらやま) : 万葉集遊楽
この唄は、日本に現存する最古の和歌集とされる万葉集の中で唄われた三首のうちの一首です。
男女が何かしらの理由で喧嘩して、女が「もう通ってこないで!」と拗ねてしまった場面を表しているとされています。
平安時代、安達太良の山を背景に思いついた和歌が時代を超えて今も詠まれていることに、山の歴史の深さを感じますね。
感じていたのは僕だけですが。
ちょうど太陽からの日差しが、木々の隙間を通って、スポットライトのように登山道を照らしています。
足元の落ち葉とスポットライトのような木漏れ日が秋の終わりを演出してくれました。
途中、あだたら渓谷奥岳自然遊歩道があったけれど、気づかずに通り過ぎてしまいました。後からメンバーに言われて知りました。
せっかくの秋の渓谷歩きが...
スキー場のゲレンデ付近まで来ると、陽が大分傾いてきました。
夕日に照らされて紅葉している木々が一段と映えます。
午後03時01分
陸奥の旅1日目は、怪我なく無事下山でき、程よい疲れと満足感を得られました。
売店を少し覗くと、桃をモチーフにしたお菓子が目立っていました。福島県は桃の生産量が山梨県に次いで、全国2位の実績を持つことをこのとき知りました。
日帰り温泉には入らず、スーパーで買い出しを済ませて本日の寝床、福島飯坂(ふくしまいいざか)温泉にある赤川屋という旅館へ向かいます。
1泊2食で6,000円くらいだったか、温泉ついてこの値段が他になかったので目にとまりました。
夜は食事を食べて温泉に入った後、ゴロゴロしながらプロ野球日本シリーズの楽天イーグルス対読売巨人軍の試合を観戦。
と思っていたのですが、知らぬ間に自然とまぶたが閉じて長い1日が終わりました。
安達太良山のまとめ
街から見える山に登り、その街を見下ろす。
安達太良山に登って思ったことは、街と山が近く、そして繋がっている。
麓から見上げればいつもそこにあり、山から見ればいつもいる場所がそこにある。
山から近い街に住んでいると、生活の中に山を感じることができるということを今回の旅で知りました。安達太良山に限らず、そんな山の多い東北にとても魅力を感じます。
また、安達太良連峰の周りには豊富な源泉が多く、各地域で泉質の良い温泉に入ることができるため、山を登らずとも安達太良山を感じることができるでしょう。
しかし、最も心に残っていることは、一部の人しか楽しめない険しい山ではなく、多くの人が足を運び、同じ感動を得られることができる山ということです。
僕たちパーティーに関しても、レベルや体力が皆それぞれバラバラでしたが、それでも楽しめたのは同じ度合いの感動を得られたからでしょう。
また来たい。
そう思うまでに時間はかからず、下山しているときにはすでに考えていました。
安達太良山の位置
安達太良山の地図
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