一切経山(東北)〜暴風小雨の吾妻連峰、うつくしまの旅(2日目)〜
2013年11月03日(日)
福島県にある標高1,948mの一切経山(いっさいきょうざん)に登ってきました。
一切経山は山形県と福島県にかけて東西に延びる吾妻連峰の一つ。今も活動中の活火山であり、場合によっては火山性ガスの影響で登山規制がかかることもあります。
標高1,600mにある浄土平が登山基地となり、山頂から望むことができる「魔女の瞳」と呼ばれる五色沼は、訪れる人全てを虜にすると言われています。
前日の安達太良山の余韻を残しつつ、うつくしまの旅2日目になります。
2日連続で活火山の旅となり、身体から硫黄臭が少し漂い始めたのではないかと気になるところ。
そんな匂いを思い出しながら、吾妻連峰を巡った旅の記録を残します。
一切経山の記録
日付:2013年11月03日(日)
天気:曇り時々小雨、ガス、暴風
人数:4人
交通:車
福島の空へ続く道
06時01分
気がつくと夢の中に入っていた前夜。寝つきがよかったおかげか清々しい寝起きとなった。前日の安達太良山が行程的に辛くなかったためか疲れは残っていない。
泊まった宿の大浴場はその昔、「きんさんぎんさん」で有名な長寿姉妹が泊まったことがあり、その名前をとって「ぎんの風呂」と名付けたとか。
貸切状態の朝風呂で目を覚まし、旅館ならではの豪勢な朝食を食べたおかげもあり、今日という日のスイッチを入れるには十分。
登山基地となる浄土平までは磐梯吾妻スカイラインを通って標高を一気に稼ぐ。
福島県の空に向かって伸びるこの道路は、元々有料道路のため途中に見晴らしの良いポイントがいくつかあり、立ち寄れるようになっている。
この日は雲が多く、山の天候がどうなっているか早くも気になり始めた。
少しだけ見えている青い空がこのまま続くことを祈りながら車を走らせる。
火山性ガスが立ち込めるエリアを超えて浄土平に到着するが、まだ車の数はあまりない。観光地であるため早朝から来るのは好き者だけか。
浄土平にはレストハウスがある。山の情報なども発信しているので登山の前に寄ることにした。
中の売店もレストランは当然ながら営業前。下山後にまた来よう。
浄土平の北に見える山が一切経山。その上だけ青く透き通った空になっている。
この時点では幸先の良いスタートを切れたとメンバー全員が思った。
暴風小雨
09時25分
一切経山へ向けて出発するが、風が強く早々に上着を羽織る。あまり着込むのは好きではないが、風があまりに強いため仕方ない。
一切経山へ向かう途中には、人体に影響のあるエリアが幾つかあり、立ち入り禁止となっている。
一切経山に限らず活火山へ行くときは気象庁が発表している噴火情報などを調べてから行きたいところ。
吾妻小富士(あづまこふじ)
福島市から眺めると小さな富士山のように見えることからそう言われるようになったらしい。
浄土平のシンボルとして鎮座し、大きく開いた火口はお鉢巡りできるため、後ほどの楽しみとしたい。
開始から数十分経ったあたりで早くも天候が怪しくなり、とうとう空から水滴が僕らに向かって落ちてきた。
同時に、「蒸れるくらいなら濡れる」と言ってウェアを脱いで半袖になった人もいた。
酸ヶ平避難所(すがだいらひなんじょ)と書かれた立派な避難小屋があった。
少し雨が降ってきたせいもあり、中には数名のグループが冷えた体を温めるため、ガスバーナーで湯を沸かし暖をとっている。
その中へ半袖で突入していくと、なんとも言えない視線を感じたのは気のせいじゃないと思う。
意を決して避難小屋を出て先へ進むも、遮るものがなくなり風が急に強く吹き付ける。
気温も下がり、辺り一面ガスに覆われて視界も数メートル先しか見えない。
それでも進まなければ終わらない。
一切経山(標高1,948.8m)山頂。
本来であれば、「魔女の瞳」と呼ばれるコバルトブルーの五色沼が見えるはずだが、そんなものはどこにあるんだと問いたくなるほどガスで視界が悪い。
おまけに雨と風がここに来て強くなり、立っていると吹き飛ばされそうになった。
大きなケルン(山頂や登山道の道標)があったので小休止。
空気大感謝。
今この場では納得できないことは言うまでもない。
「一寸の望みをかけて魔女の瞳が見えるまで待とう。」
とはならず、早々に諦めて足取り早く下山することにした。
うつくしまのお鉢
11時46分
浄土平に戻ってくると、駐車できないほどの大量の車、お鉢に向かって登る観光客の列がいた。朝の喧噪はどこへ行ってしまったのか。
僕らもお鉢を目指して階段を登り始めると、空が青くなってきた。ガスっていたのは一切経山だけだったみたいだ。
稜線に出ると遮るものがないため、再び暴風の中に身を置くことになった。
「さっきと比べれば、雨が降っていないだけまだいいね。」
僕たちは互いにポジティブな気持ちを確認し合い、お鉢を周ることにした。
前回来たときも、うつくしまのお鉢は強風で前に進むのが辛かった思い出がある。
駐車率にも驚くが、日本人の几帳面さが現れている整列具合。
駐車線がなかったらここまで綺麗に駐めないのかな。
お鉢巡りを終え、オアシスへ避難して昼食を食べました。
赤べこ(あかべこ)とは福島県会津地方の郷土玩具である。「べこ」は東北地方の方言で「牛」という意味である
807年(大同2年)、柳津町の円蔵寺には徳一大師が円蔵寺の虚空蔵堂を建立する際、上流の村から大量の材木を寄進された。しかし、水量が豊富な只見川から材木を運搬することは決して簡単ではない仕事だった。
人々が材木を運ぶのに難儀しているとどこからか牛の群れが現れ、材木の運搬を手伝ってくれた。重労働で多くの牛が倒れる中で最後まで働いたのが赤色の牛だったといわれている。そのことから、赤べこが作られた。出典:赤べこ - Wikipedia
赤色には魔除けなどの意味もあり、赤べこは「幸せを運ぶ牛」、「子どもの守り神」として会津地方を中心に多くの人に愛されているとのこと。
昼過ぎには風も少し落ち着いてきた。
福島県のほか山形県、新潟県に大きくまたがる国立公園。今回訪れた磐梯吾妻地域はほんの一部ですが、その中でも浄土平を訪れた人は少なからず、「#登山 #観光 #火山」とタグ付けする人がいるでしょう。
「晴れてきたからもう一回登るか。」
当然却下され、浄土平を後にした。
冷えた身体を温めるため、幾つかの候補から選び抜いて野地温泉ホテルへ。
土湯温泉郷と呼ばれる磐梯吾妻特有の乳白色と源泉かけ流しで人気の温泉。「天狗の湯」入り口の天狗のオブジェが印象的。
日も暮れて帰りが遅くなってしまうので、高速道路に乗って南下するも、3連休中日ということもあり、東北自動車道は渋滞。
サービスエリアの食事が僕らを現実へと徐々に引き戻し、短くも長い1泊2日の旅が終わりを告げた。
一切経山のまとめ
さっきと比べれば、雨が降っていないだけまだいいね。
「魔女の瞳」も見れず、おまけに暴風、雨と散々な目に遭いました。
難しい問題に直面した時、物事をポジティブに考えれば先へ進む原動力になることがわかりました。
雨と暴風サイコー!とはならなかったけど、長い人生の中で見れば仲間と過ごした良い思い出の一つになるでしょう。
街から近く、経験の浅い人でも挑戦することができる開放的で景色の良い山がいくつもあります。
まだまだ僕の知らない奥深さのある福島県を知るために、またいつの日か危険で美しいうつくしまを訪れたいと思います。
一切経山の位置
一切経山の地図
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