燧ヶ岳(尾瀬)〜登頂断念、季節の変わり目に訪れた遥かな尾瀬の旅〜
2013年09月07日(土)〜08日(日)
福島県にある燧ヶ岳(ひうちがたけ)に行ってきました。日本最大の高層湿原である尾瀬(おぜ)のシンボルであり、標高は2,356mで東北以北で最高峰となっています。
尾瀬は登山をしない国民にも広く知られており、湿原の中を木道が遥か彼方へと続いている写真等が世に知れ渡っていることでお馴染みです。
この話は今から約2年前のことになるが、過去にないくらい悪天候だった思い出が今でも残っています。
結果から言うと、尾瀬のシンボルである燧ヶ岳に登るはずだったのですが、時間もなくなり、天候の悪化もあり止む無く登頂断念という結果に終わってしまいました。
初めての山小屋泊に加えて夏から秋への変わり目を感じる高層湿原トレッキングを体験できたのでその記憶を記録に残したいと思います。
燧ケ岳の記録
遥かな尾瀬
9月に入ったにも関わらずまだまだ暑い東京を早朝出発しました。
誰かが自宅の玄関に登山靴を置き忘れてきたハプニングもありましたが、朝7時過ぎに群馬県側の尾瀬への入り口である大清水(おおしみず)に到着しました。
駐車場は一杯というほど埋まってはいなかったです。
午前07時42分。
準備を終え、スタートします。今日は燧ヶ岳まで登らなければならないというのに随分遅いスタートになってしまいました。
登山口の標高は1,180m。高層湿原の尾瀬までは緩やかに登っていく仕様となっています。
歩き始めて最初のポイントである一ノ瀬(いちのせ)休憩所。
ビールやアイスなど田舎のおばちゃんが置物のように座っている店を思わせる店構えです。
尾瀬は国立公園で特に環境保護に対してはこれでもかと言うくらい至る所に注意喚起があります。
外界からの侵入を拒む仕様になっている。厳重ですね。
ここまでで長い林道歩きは終わり、やっと遥かな尾瀬の入り口となります。
高層湿原へ向けて
トレッキングの始まりです。湿原までは森林の中をひたすら進みます。
尾瀬の花の時期は既に過ぎ去りましたがその名残りが道沿いに点在していました。
最盛期の尾瀬は一体どんな様相なのでしょう。次回のお楽しみですね。
道はしっかり整備されている。
ザックに袋をぶら下げるのはなるべく控えましょうね。
もともとは岩壁から出ていた岩清水(いわしみず)と呼ばれる湧き水。
群馬県と福島県を道路で結ぶ計画がその昔あったみたいですが強い反対運動で中止になって今の尾瀬が存在するみたいです。
秋への衣代わりの時期ですね。紅葉真っ盛りの時期にも来てみたい。なんでこんな中途半端な時期に来てしまったのかわからない。
これがオゼヌマアザミというやつでしょうか。
三平峠(さんぺいとうげ)に到着しました。標高は1,760m
別名は尾瀬峠というだけありここから少し進めば尾瀬沼(おぜぬま)へ出ます。
尾瀬沼(おぜぬま)に到着です。尾瀬ヶ原と並ぶ尾瀬を代表するポイントのひとつです。
これから登る燧ヶ岳は雲の中です。
尾瀬といえば「木道」というイメージがある。
木道の高さが意外と高いため不意に落ちたら怪我するかもしれません。
気をつけないと自分のように写真に夢中で落ちるでしょう。
尾瀬沼周辺には長蔵小屋と尾瀬沼ヒュッテの二つの山小屋があります。
本日泊まる予定の尾瀬沼ヒュッテ方面へ向かう。
尾瀬沼ヒュッテは洒落た木造りの山小屋で入り口には天体望遠鏡が置いてあります。
「これで夜は星空が観れるな」
と少し夢見る。
長蔵小屋経営の売店があるが、時間がないので明日帰る前に寄ることにします。
ここからは気を引き締めて山へ向かわなければならないが、尾瀬の開放感で気が緩んでしまう人もいるみたいです。
燧ヶ岳を目指す
沼山峠方面に向かいます。
この時期でこの天気だからか人は少ないです。
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......夏の尾瀬。
2015年の梅雨の晴れ間に再び同じ地の同じ木道を歩く機会に恵まれました。
この時は時間が経っても記憶が蘇ると実感した瞬間でした。
記事の内容が古いので最近の写真で盛り上げてみる。
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沼山峠方面への分岐を燧ヶ岳方面へ向けて進みます。
少しずつ草紅葉に向けて色づいているように思えます。
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......2013年の初来訪から1年後の2014年初秋の尾瀬ヶ原。
尾瀬ヶ原を挟んで燧ヶ岳の反対側にそびえる至仏山を訪れたときのものです。
同じ9月なのに四季の移り変わりが目に見える形で現れていました。
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餌はあげないぞ。
木道を歩き続けると尾瀬ヶ原へ向かう道から分岐して燧ヶ岳へ向かうための長英新道(ちょうえいしんどう)へ入ります。
ここから約4.5km登って燧ヶ岳を目指します。山のキロ数ほどあてにならないものはない気がします。
少し開けてきた。
進むごとに道幅も狭くなってくる上、ここまで見所が全くないと周囲から文句が出始めていました。
長英新道は比較的新しく作られた道のようです。後から作られた登山道はどの山も共通して景観があまり優れていない気がするのは気のせいか。。。
延々と続く道を少しずつ進んでいるとついに視界が開け、尾瀬沼が一望できるポイントまで到達しました。
ここまでの苦労が報われた瞬間です。
前半で長英新道というボディーブローを浴び続けた自分たちの身体は最後の急登と階段のワンツーで足が思うように進みません。
この時点でコースタイムよりかなり遅れています。体力に差があるパーティでの登山は計画の立て方に無理がないようにしなければならないと歩きながら身に染みました。
徐々に雲が山を覆うようになってきました。
この階段を登り切ればひとまず登りが終わる。
撤退と乾杯
こうして山頂を踏むことなく私たちは燧ヶ岳に背を向けて下山を選択。
下山開始直後、突如の豪雨に見舞われて必死に来た道を走って小屋まで駆け込みました。
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...晴れていればこんな感じに尾瀬沼から日光連山まで見渡せます。
同じ山とは思えないくらいの景色です。同じ山に再訪すると山は天気で見え方が大きく変わるということを実感します。
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尾瀬沼ヒュッテに着くと一気に気が緩みました。
季節外れであいにくの天気ということもあり、一人で広い部屋を独占できました。畳の部屋には布団から毛布まで麓の旅館と一瞬錯覚するような設備です。
自分たちの他に林間学校の行事で来ていると思わしき学生たちが沢山いました。
こんな雨の中来たんだから立派なものだ。
ヒュッテ内には小さいながらも売店が併設してあり、生ビールをジョッキで買うこともできるみたいです。後ほどのお楽しみですね。
衛星放送が見れるおかげで天気予報まで見れます。山の近代化が進んでいますね。
しかし明日の15時まで完全に雨マークとは完全に負け試合ですね。なぜこのような日に来てしまったのでしょうか。
尾瀬の山小屋の特徴としてお風呂が付いていることがあげられます。
山小屋初心者には親切なサービスだと思うが、山で数日過ごしたあとの「やってやった感」のある臭いは洗い流されてしまいます。
そうは言っても入浴してさっぱりしたいのは現代日本人の嵯峨でしょうか。心置きなく使わせていただきました。
風呂のあとは自宅から持ってきたビールで祝杯。
登頂はできなかったが、このとき遥かな尾瀬に来れたことに乾杯しないわけにはいきません。
ここで持参したビールの説明をしよう。
今回持ち込んだサッポロクラシックとはサッポロビールが製造販売している北海道限定販売のビールである。帰省した際に買い占めてきた一品です。
しかし、最近は都内にある北海道のアンテナショップで普通に販売しているため限定感があまりないことを知り、嬉しいようで嬉しくない気持ちが湧き上がりました。
サッポロクラシック|サッポロビール
だらだら過ごしていたら夕食の時間が来たので食堂へ行きます。
尾瀬人と書かれた洒落たジョッキのビールは売店で注文したらその場で注いでくれる山小屋らしからぬスタイルで提供してくれます。
食事はご飯がおかわり自由で林間学校の男の子たちに混ざって何杯かいただきました。
非常に満足のいく食事を食べれました。
尾瀬沼ヒュッテが初めての山小屋なのでわかりませんが、他の山小屋もこんなに満足のいく食事なのでしょうか。
再び部屋でだらだらする。
本当は食後にウッドデッキで天体望遠鏡を使って星空を鑑賞するという妄想を抱いて尾瀬に来たのですが、もはやそれはどうでもよくなりました。
身体はそれなりに疲労していたためこの日は早めに就寝しました。
下山
2日目。
朝食は和食なのか洋食なのかよくわからない組み合わせで学生時代過ごした寮の朝ごはんのようでした。
朝食も済ませ出発の準備に入りますが、外は昨日よりもさらに雨模様。
レインウェアの下をまともに使ったのはこのときが初めてかもしれません。
ウッドデッキもご覧のありさま。
林間学校と思われる生徒たちは傘を差して早々に帰路についたようです。
おそらくバスが乗り入れてる沼山峠(ぬまやまとうげ)へ向かったのでしょう。
帰る前に昨日覗けなかった長蔵小屋に立ち寄ります。
右側は綺麗に陳列されているのに対し、左側はとりあえず突っ込んでる感が否めません。
尾瀬限定の商品が多く限定感を感じますね。
この天気で客は自分たちだけのようでした。
長蔵小屋前で尾瀬の水を頂戴して家に持ち帰る作戦を決行しました。
雨で濡れた木道ほど滑るものはありませんね。
これだけの雨が降る尾瀬に再び来ることは二度とないだろう。
昨日よりも燧ヶ岳が見えなくなっています。
いつの日かリベンジを心にひっそり近い下山します。
樹林帯の中に伸びる木道がガスのおかげで神秘的に見えたのはきっと他に良い風景がなかったからそう見えただけで気のせいだろうか。
雨の影響による沢の増水は豪音として森に響き渡る。
帰りも林道は長く感じる。
午前11時07分 下山。
レインウェアを着ているとはいえ、雨で濡れて身体も冷えているためさっそく温泉へ行こう。
今回行く温泉は沼田インターへ向かう途中にある花咲の湯(はなさきのゆ)。
清潔感のある館内と大浴場が印象的でした。
武尊山(ほたかやま)の麓に位置し、登山帰りのアクセスには最適かと思われます。
何かと登山を基準に評価してしまう癖がついてしまっています。
尾瀬の水がここでも無料でいただけます。
花咲の湯で最も好印象だったのは食事です。
美味しい上に、量がとても多く満足した記憶しかありません。
冬はオグナほたかスキー場の帰りに冷えた身体を温めるために立ち寄ってもいいと思います。
館内にあった至仏山に向かって伸びる木道とニッコウキスゲの絵。
最盛期の尾瀬に行きたくなる1枚に温泉のロビーで出会いました。
このときは雨に打たれ、山頂には立てず、尾瀬なんてたいしたことない場所という感想しか持てなかったが、初めて山小屋に泊まれたこともあり自分の中の登山レベルが少しだけ上がったと感じることができました。
しかし山は快晴に尽きる。そう思ってしまうのは人間の性なのでしょうか。
...
草紅葉の尾瀬。
その後、しばらく尾瀬から遠ざかって色々な山に登っていた頃、未だ見ぬ燧ヶ岳を見るべく尾瀬ヶ原を挟んで対面に優しく居座る至仏山から初めてその姿を見た。
GWの尾瀬。
冬を越えて世間の季節が夏に近づいていく中で、まだ冬から衣替えが終わっていないGWの尾瀬を訪れた。
冬に鍛錬を重ねたスノーボードを背負って登り、尾瀬ヶ原に向かって滑降する楽しみはゲレンデでは味わえないことを尾瀬で知った。
そして燧ヶ岳を撤退してから約2年。
4度目の尾瀬を訪れ、燧ヶ岳へ見事快晴のリベンジを果たすことができ、初夏の苦い思い出が甘酸っぱい夏の思い出で上書きされた。
今日まで晩夏、秋、春、そして盛夏と色々な季節を尾瀬で過ごしている。広い日本の一箇所にこれだけ何度も訪れるのは自分にとっては稀であり、最初に悪天候の尾瀬を経験したことが大きく影響していることは間違いない。
これからも登山を続けていけば天候に恵まれない場合が必ずやってくることは間違いないけど、そんなときは尾瀬のことを思い出して2度目3度目の再訪に期待して旅を深めていこうと思います。
燧ヶ岳の位置
燧ヶ岳の地図
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