NAMARA TriP

なまら旅して、なまら撮る

日本のホスピタリティ

DIARY 033

 先日、白馬村で家族が中心になって経営する小さな旅館「しろうま荘」にお邪魔したときのことだった。どんな宿なのか、事前の情報は今の時代だから少しは知ることができた。その中でも、パソコンやスマートフォンの画面越しでは伝わらない「何か」を実際に泊まって感じた。

おもてなし

 日本人が得意とするところの心のこもった待遇を総じて「おもてなし」とよく言われる。最近では東京オリンピック誘致の際、世界へ向けて行ったプレゼンテーションが記憶に新しいところだろう。

 英語では「ホスピタリティ」と呼ばれ、「接客・接遇の場面だけで発揮されるものではなく、人と人、人とモノ、人と社会、人と自然などの関わりにおいて具現化されるものである。」  とされている。その中でもおもてなしは、人と人の部分にフォーカスしたもの。

 では、おもてなしやホスピタリティというのは一体なんなのか考えてみた。日本の文化として大切にされている「奥ゆかしさ」や「気遣い・気配り」といった思いやりを持った行動や考え方が、近年では世界的に評価されているが、それを行うだけがおもてなしやホスピタリティではないと思う。

 接客で考えると、主人が客人のために行なう行動に対して、それを受ける客人も感謝の気持ちを持ち、客人が喜びを感じていることが主人に伝わることで、共に喜びを共有するという関係の成立が大事になる。

    つまるところ、僕たちの感じている「おもてなし」とは両者の間に「相互満足」があって初めて成立するものだろう。

特別なことはしない

 僕たちがしろうま荘を訪れたのは、3月初旬の街で人々が花粉に悩まされる頃。長野県の白馬村では、短い冬に終わりを告げて、春へと向かい始めていた。冬の間に滞在していた海外からのゲストも帰国し、白馬村も少しずつ本来の落ち着きを取り戻してきた様子。

 しろうま荘は、古くからの木材を活かした伝統的な日本建築と和風モダンなスタイルを生かした独創的で美しいデザインのスキー民宿発祥の宿。昔ながらの家庭的なおもてなし、先代から受け継がれてきた郷土料理の味などが好評で予約は常に一杯。

 しかし、それだけであれば他にも宿はたくさんあるだろう。しろうま荘には他の宿と違う部分がある。宿にはエレベーターもなければ、各部屋の備え付け冷蔵庫もない。つけようと思えばできるけど、少しでも電気の使用量を増やして温暖化に拍車をかけ、将来的に白馬村でスキーができなくなることを考えるとやりたくない。そのため、場合によっては別な宿を案内することもあるとか。

 そういった部分が評価されて、ワールド・ラグジュアリー・ホテル・アワーの2012年度スキーリゾート部門でグローバルウイナーを受賞している。しろうま荘が受賞したのは、独創的なホスピタリティとして白馬でしかできない体験を本当の贅沢とした接客が評価された結果だという。(その後、Luxury Travel Guide Awards 2016において、支配人の丸山俊郎氏がGeneral Manager of the YearのGlobal Winnerを受賞した。)

 特別なことは何もしていないというが、自分たちのポリシーを貫き、日本の元来ある精神的な文化を大切にしてきたことは、実際に泊まっている中で自然と感じることができた。

日本のホスピタリティ

 僕は海外に行ったことがないが、子供の頃から海外映画などでよく見るチップを渡すという行為がいまいちよく理解できなかった。チップとは、客人が上で主人が下という上下関係のあるサービス行為に対して、対価または見返りとして客人が渡すものだ。日本ではチップを渡す文化にあまり馴染みがない。それはきっと「サービス」ではなく、対価や見返りを求めない「おもてなし」の精神が根付いているからだろう。

 僕がしろうま荘で感じた「何か」は、サービスではなく、主人も客人も一緒に楽しむためのものとして振る舞う「日本のホスピタリティ」だったに違いない。

 いつかまた白馬村に行く際に泊まりたいと思う。

しろうま荘の位置

 

参考

信州白馬八方温泉の宿【しろうま荘】

www.projectdesign.jp

www.luxurearth.com

 

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