NAMARA TriP

なまら旅して、なまら撮る

春の白馬を訪れて

HAKUBA SPRING 2018 009

 2018年3月17日〜18日

 いつもながらに一瞬で終わってしまった厳冬。厳しくも美しい日本の冬は、その短い期間に凝縮されているからこそ輝かしいのかもしれない。

 そして季節が移ろい、春の芽吹きが咲くまでの狭間は、僕たち雪を滑る人間にとってかけがえのない時間だということ。

 

COLOR SPORT CLUB

HAKUBA SPRING 2018 001

 日本海からの低気圧によってもたらされた白い雪の恩恵と、それらが覆い被さって白く染まった岩峰の連立。そこに木や緑はなく生命感は感じられない。

 幾重にも切れ落ちるように流れる山肌に降り積もった雪を見て、そこを滑りたいという欲求が湧いてくるのは、ごく一部の人間だけなのかもしれない...

 ここは長野県北部、後立山連峰の山並みが聳り立つ白馬村。冬の厳しさも一つ落ち着き、日の出も少しずつだが確実に早くなってきた。そして、春の晴天を活用して裏山、つまりはバックカントリーエリアへ向かう気持ちになるのは必然かもしれない。

HAKUBA SPRING 2018 002

 冬山での経験や知識が足りない僕は、数日前に白馬村はローカルガイドクラブである「カラースポーツクラブ」にガイドを依頼した。

 カラースポーツクラブは、まだバックカントリーという言葉も文化も発展していなかった90年代前半に、白馬の山々を開拓してきた代表の舎川さんが立ち上げたバックカントリーガイドカンパニー。

 ツアー出発前には必ずクラブハウスでミーティングがあり、緊張も少し解れるというものだが、僕は逆にいつも緊張が高まってしまう。

 今回のツアーでは八方尾根の南面を滑る予定となっている。参加者は僕を含め5名で皆手馴れた人たちばかり、僕だけこの難易度のツアーが初めてという状況にさらに緊張する。

 ミーティング後、八方尾根スキー場の名木山ゲレンデからリフトを乗り継ぎ、八方池山荘に到着した。早々にザックを下ろして登る準備を済ませる。この準備も参加者全員慣れている様子で少し焦る。緊張と焦りはバックカントリーで思わぬ事故に繋がる。こればかりは経験を積んで慣れていくしかない。

 歩き出して休憩を交えながらも1時間ほど登っていくと、尾根の途中に木々の生えた場所が出てきた。滑走はここからという指示のもと、小休止の後滑る準備を整える。

HAKUBA SPRING 2018 025

 オープンワイドな斜面から大きく構える2つの岩の間に吸い込まれるように雪が続いている。通称「大岩シュート」と言われている斜面。

 僕の番がきた。出だしの斜度は推定45度くらいあったので少し落ち着いて滑り出したが、ボトムに近づくに連れて雪質が大きく変わり、そのときエッジが一瞬抜けた。なんとか体勢を立て直しそのまま斜面を滑った。バックカントリーでは途中凍っている部分もあり、それに対応できる準備をしていなければいけないことを改めて学んだ。

 大岩を通り抜けた瞬間、自分が今どこを滑っているのかわからなくなるほど、広く雄大な自然の中に自分を感じた。

 参加者全員が無事滑り降りてきた。皆滑りが安定している。もっと滑り込まなければいけないと痛感した。

HAKUBA SPRING 2018 004

 広大な白い大地の上で贅沢な休憩。

 こんな晴天の日は、日焼け対策を行わないないと大変な目に遭うと、翌日自分の顔を見て学んだ。

HAKUBA SPRING 2018 007

 休憩後、八方沢を滑るが、気温の上昇が重なり板が進まない。4月上旬の気温と言われたこの日は、半袖一枚で滑ってもいいくらい暑かった。ボトムに行くにつれて、雪崩によって発生した硬いデブリが沢山堆積していた。正直、ここを板を外さずに上手く通り抜ける技術と経験が、僕にはまだまだ足りていなかった。

 デブリ地帯を抜けて最後の休憩後、林道を横移動しながら帰ると説明を受けたが、これも想像以上に難しかった。みんなについていくことができず、どんどん離れていってしまう。なんとか林道終点に到着したが、もっと経験を積まなければいけないと感じた。でも春の山は旅情感があって嫌いじゃない。

HAKUBA SPRING 2018 008

 帰りの車に板を積む際、「板を脱いだらラチェットを締めるクセをつけましょう」と舎川さんに指摘され、思わずやってしまったと思った。人間は疲れてくると普段やっていない細かいことができなくなる。普段からいかに習慣づけるかでいざという時の対応が変わってくることを学んだ。

 学び多き1日でしたが、とても貴重な経験を得られたツアーを無事終えて、北アルプスの抜こう側に陽が落ちていった。

Mauka outdoor @FULLMARKS原宿

HAKUBA SPRING 2018 010

 2日目の白馬村も快晴。この日はいつもお世話になっているフルマークス原宿の「はじめてのバックカントリー」イベントに参加。

 この日はフルマークスでサポートしている白馬村に拠点を置く「Mauka outdoor」のガイド、福島格さんが1日案内してくれた。最初は道具の使い方から始まり、細かなところまでゆっくり教えてくれました。 

HAKUBA SPRING 2018 011

 昨日とは趣向が変わり、この日は少しのんびりほのぼのした雰囲気。

 場所は小谷村、栂池高原スキー場のロープウェイを利用した一番上から始まった。ロープウェイでバックカントリーエリアに簡単にアクセスできるのが栂池の魅力かもしれない。

 年始に訪れたときはまだロープウェイが動いていなかったから、下から登って裏山へ入ったのを思い出す。その時の話もいつか時間のある時に。

 まずは登るというより、横移動して目的の斜面へ取り付く。

HAKUBA SPRING 2018 012

 ゲレンデと違い、急な地形の落ち込みや障害物があるのがバックカントリーの基本である事を伝え、その上でどう滑るかを格さんはレクチャーしてくれた。

 頑張って登って「はい、好きなところをどうぞ」では滑りがイマイチになってしまう事が過去に何度もあった。みんな自然地形の滑り方が分からない、慣れていない人が多いからかもしれない。僕もそうです。 

 その滑り方が少しでもわかってくると、自然の地形を滑るのが楽しくなってくるのかもしれないと期待を胸に滑ったら、気持ちよく雪質の違いに足を取られて転倒。近くに木の根がありとても危なかった。バックカントリーでは基本的に転倒しない事が重要と肝に命じた。

HAKUBA SPRING 2018 013

 2本目は天狗原と呼ばれる1時間ほどの登りで滑れるエリアを目指す。

 登っている途中で白馬三山の説明を入れてくれる。皆この景色に感動していた。

HAKUBA SPRING 2018 014

 2本目からは格さんの奥さんであり、元スキークロス選手の福島のり子さんが合流。子どもを幼稚園に預けてから来たというアクティブな出勤。

 斜度も増してきて登りも少し急登になってきた。

HAKUBA SPRING 2018 015

 少しずつ天候も悪くなり雲が増えてくるのと同時に、気持ちは滑る方へとシフトしていく。

HAKUBA SPRING 2018 016

 格さんとのりこさんに見守られる中、皆思い思いのラインを夢見てドロップイン。

 するけど、やはり思うように滑れない。そしてどこの雪が良さそうか、どこを滑るのが理想なのかを瞬時に判断できない。そこを丁寧に教えてくれたので、今後の滑走に活かしていきたい。

HAKUBA SPRING 2018 018

 途中、プチセッションという事で、格さんのレイバック。

HAKUBA SPRING 2018 019

 身体の軸を意識して壁を曲がる。 

HAKUBA SPRING 2018 020

 フルマークスイベント主催者、近藤さんのレイバック。

HAKUBA SPRING 2018 021

 帰路はナチュラルバンク地形とゲレンデを滑って、太ももがパンパンになるまで滑り、全員怪我なく無事終了した。

HAKUBA SPRING 2018 022

 疲れた身体にローカル行きつけの喫茶店「憩」へ。

 裏メニューのボリュームに驚きながらも、完食して全行程完了した。

HAKUBA SPRING 2018 023

 翌日からは天気が崩れる予報となっている。翌日午前中だけ滑ろうかと考えたが、充分満足のいく時間を過ごせたので、これで白馬村を後にした。

 

春の白馬を訪れて

 この週末だけ見事に太陽が味方についてくれ、充実した裏山滑走の2日間を過ごす事ができました。そして、一人では味わえなかったこの充実感は、ガイドとそれに関わる人たちのおかげだと改めて実感できました。

HAKUBA SPRING 2018 005

 カラースポーツクラブには、これまでも何度か依頼してバックカントリーエリアへ入ってきましたが、「ガイドを依頼したからもう安心だ」という意識ではなく、自己責任でのリスクを少しでも減らし、自立する上でガイドから学べる事が沢山あると最近感じるようになりました。

HAKUBA SPRING 2018 024

 Mauka outdoorによるガイドツアーでは、山の滑り方やゲレンデでできるバックカントリーにつながる滑り方を、その都度考えて練習することが大事なんだと気付かされました。

 もう直ぐ春も本番になってきますが、この経験を生かして残りのシーズンも滑りたいですね。

 

白馬バックカントリーガイドカンパニー

www.colorsportclub.com

www.maukaoutdoor.com