三頭山(奥多摩)〜初冬のロマン溢れる奥多摩の旅〜
2013年12月01日(土)
東京都奥多摩町にある三頭山(みとうさん)に行ってきました。
三つの頂上があることからそう呼ばれるようになった。標高が最も高いのは中央峰の標高1,531mです。これは奥多摩三山の最高峰でもあります。
山頂からは均整のとれた富士山の姿を見ることができ、都民が日帰りで登山をするときに候補に挙がる山の一つです。
湖を渡り、紅葉の奥多摩をハイキングをしよう。
そんなロマン溢れる気持ちで訪れた今旅でしたが、予想に反して険しい旅になってしまいました。
すぐそこに迫る冬の訪れを感じながら歩いた初冬の奥多摩の旅を記録に残します。
三頭山の記録
日 付:2013年12月01日(土)
天 気:快晴
場 所:三頭山(東京都)
人 数:3人
ルート:峰谷橋 → ヌカザス尾根 → 三頭山 → 御堂指尾根 → 峰谷橋
交 通:車
2週連続の奥多摩へ
06時33分。
僕らは2週連続で奥多摩へ向かっている。
毎週関越に乗っていると職場の人に言うと、若干引かれたのはなぜだろう。
奥多摩に入ると、奥多摩湖を彩る紅葉が待っていた。奥多摩湖は多摩川を堰きとめるダム湖でもあり、正式名称を小河内ダム(おごうちだむ)という。
この日の奥多摩湖は波もなく、紅葉を映し出す鏡の役割を果たしている。山の紅葉が麓まで降りてきているようだ。
僕たちは紅葉に歓喜しながら奥多摩湖沿いを走り、峰谷橋(みねだにはし)前にある駐車場に車を駐めた。
冷たい登山靴に足を入れて出発の準備を進めながら、本日のルートを確認する。
写真上の青い線が登りのヌカザス尾根、橙の線が山のふるさと村ビジターセンターへ下る御堂指尾根(みどうざすおね)。
三頭山に登るときは都民の森を拠点とするのが一般的だが、奥多摩湖に浮く浮橋を渡るため今回のルートを選んだ。
夜が明けて間もない奥多摩の朝の冷え込みを感じながら橋を渡り、登山口を目指す。
奥多摩湖周辺は紅葉前線が下りてきているようで、時期としてもそろそろ秋の終わりが近いのか、早朝の奥多摩湖を赤く染める紅葉が力強く見えた。
浮橋から始まるヌカザス尾根
今回ルートを決める際、どうしても外せなかった奥多摩湖に浮かぶ浮橋。
上下に揺れる浮きがいくつも連なって形成されているこの橋は、水位が低い渇水時に外されてしまうので、このタイミングで渡れたことは運が良かったのか。
浮橋に足を置いて揺れを感じながら橋を進むと、日陰に入ったところで冬の訪れを知らせる霜が降り注いでいた。
08時43分。
ヌカザス尾根から三頭山へ向けて急登の尾根を進む。
地図を見るとかなりの急登であることが予想されたが、想像以上の急勾配に全員が驚いていた。
「三頭山って楽な山じゃなかったか?」
「私が前に来た時は楽なコースだった。」
「誰だ、こんなコースを選んだのは。」
。。。
そんな愉快な会話を弾ませながらきつい登りをひたすら登った。
奥多摩湖を見下ろす高さまで来ると、気温も一段と低くなってきたが、身体から吹き出る汗がこの登りの辛さを物語っていた。
小休止をして疲れた体を休ませながら天を仰ぐと、青い空を遮るように彩る紅葉がまだ残っている。
東京に来てから秋が長く感じるが、それは雪のある冬が短いせいかもしれない。
尾根を挟んでブナとスギの木が綺麗に分かれている。登山道を境に綺麗に分け隔たれたこの植生の違いは何なのか。
三頭山はかつてブナ林がたくさん残る山だったが、都民の森を中心に木々を切り倒してしまったため昔よりも減ってしまったらしい。
このヌカザス尾根側は今も新緑と紅葉の美しいブナの木がたくさん残っている。
09時33分。
標高971mのイヨ山という変な名前の山頂には手作りの標識が吊るされていた。
特に眺望があるわけでもなく、かろうじて奥多摩湖が見えるくらいのため先へ進む。
ここから先は一度下り、再び登り返す必要がある。
登り返しでは思わず見上げてしまうほどの坂道。
メンバーから会話というコミュニケーションも徐々に薄れていくほど、精神と肉体に負担が重くのしかかる。
「都民の森から登ればよかったかな。」とはここに来て口にすることはできなかった。
標高を上げるにつれて、木々の葉も落ち葉に変わり足元に敷き詰められている。
ここで焚き火を起こすと山火事になることは間違いないだろう。
10時23分。
標高1,175mの糠指山(ぬかざすやま)に到着。ようやく標高1,000m以上に突入した。
「あとは山頂まで軽く走るように進むだけだ。」
そんな淡い期待を裏切るかのように、このあとも同じような尾根沿いの登りが山頂まで約1時間ほど続いた。
単調なアップダウンの繰り返しもいよいよ終わりが近づいてきた。
三頭山山頂直下についた時の喜びといったら、軽いハイキング気分では得られない達成感を全員が感じた。
この瞬間、この景色
11時48分。
三頭山(西峰)の頂に到着した。
山頂標識全体が三つある三頭山の峰を表しているのか、それとも奥多摩三山を表現しているのか。どちらでもいいことに気がいくのは僕の性格的なものかもしれない。
2週連続で初冬の富士の姿を眺望することができた。
今この瞬間、この景色を見られることがどれだけ貴重なことか。
12時32分。
腹も膨れれば、体力も回復するのが人間。みんな元気を取り戻した。
昼食を済ませて御堂指尾根を下る。
僕たちはサイグチ沢を通って、山のふるさと村ビジターセンターを目指して降り続けていくが、全くと言っていいほど登山者とすれ違わない。
三頭山の山頂にいた人たちは都民の森から登った人がほとんどのためか。
同じ山でも選択するルートによってその山が”静か”になる。
下るにつれて次第に勾配もなくなり、沢を流れる水の音が近づいてくる。
下山するルートに沢のあるコースを選ぶと、疲れた身体と気持ちが癒されるため意識して計画してみるといいかも。
奥多摩周遊道路を過ぎるとビジターセンターが見えてきた。
その向こうに見える奥多摩の山々が太陽に照らされて神々しい。
14時59分。
山のふるさと村ビジターセンターには、車でも来れるため一般の観覧者が数人いる。
数日前にクマが出たとの情報があり、奥多摩にもクマがいることをこの時初めて知った。
12月に桜が咲いているが、東京の冬は桜が咲くのか。
奥多摩湖に沿って遊歩道を歩き、駐車場のある場所まで戻り再び歩いていると、次第に日も落ちてきたため若干肌寒さを感じてきた。
15時49分。
体力を要するルートだったが、朝渡った浮橋を通り、無事下山することができた。
夕日に照らされる奥多摩湖に見送られ、静かに沈む太陽と共に一日が終わった。
奥多摩の名湯
冷えた身体を温めるために僕たちは事前に探しておいた奥多摩湖のさらに奥にある秘湯、蛇の湯温泉たから荘を訪れた。
傷ついた大蛇が川原の湯で傷を治したので「蛇の湯」と呼ばれるようになったのが由来。
「わざわざ遠くへ行かなくてもこんな秘境の宿が近くにあるんだよ。」
と言わんばかりの歴史と味が詰まった良い温泉だった。
奥多摩に来たらまた足を運びたい。
帰りはあきる野市の街道沿いにあるコテージ村のレストランで、秋川牛という高級ブランドの肉を使用したハンバーグを頬張り、東京の山奥を後にした。
三頭山のまとめ
同じ山でも選択するルートによってその山が”静か”になる。
登山をするとき幾つかあるルートの中から吟味して計画を立てると思います。
それぞれ特徴と個々の良い悪いがあるかもしれませんが、人気の山でもルートや時期によって、雰囲気がまったく異なることをこの旅で再発見しました。
みんなと違うベクトルで山に入ると、一見賑やかで近代的な山も静かになり、その山の本来の姿と向き合うことができるのではないかと思います。
もし三頭山に行く機会があり、ロマンチストで静けさが好きであるならば、僕たちが歩いたルートを一度候補に入れてみるといいでしょう。
10月から始まった2013年の紅葉の旅もこれでようやく終わりました。
毎年秋になれば、見れるのになぜ人はここぞとばかりに紅葉を見に行くのか。
「終わりがあるからこそ美しい」
という物事の道理から考えると、二度と訪れない「今」を一所懸命生きているから、人は紅葉を見て美しいと感じるのでしょう。
1週間程度の最盛期を迎えると、そこからは落ち葉になるまで枯れて朽ちていくだけ。
そんな儚い命を宿した彩り豊かな紅葉を見るために、僕を含めた日本の人々はこれからも「紅葉刈り」と題して日本の彩りを追いかけるでしょう。
三頭山の位置
三頭山の地図